《石原慎太郎共同代表会見全文(1)》結党時の「心理的な亀裂が尾を引いた」
分党を決断した日本維新の会の石原慎太郎共同代表が29日、国会内で記者会見し、決断の経緯や今後の見通しなどについて語った。会見の詳細は次の通り。
「お聞きおよびのように、昨日ですね、名古屋に出向きまして、4時に名古屋のある場所で橋下さんと会見しまして、『分党をしたい』ということを申し上げました。
個人的な見解も含めて申し上げますとね、私自身のことでありますけれども、私が都知事を辞めて、あえて国会に戻った理由は、いろいろありますが、その一つはなんといっても、日本の憲法をかえて、この国を立て直したいという、かねてからの私の熱願です」
「それと、20年近く前に私が永年勤続で表彰をうけたときに、その謝礼の演説で、私はこの国の国政というか、(国政に)携わっている自民党に愛想を尽かして、(衆院)議員を辞職すると明言しましたが、そのときに申したことですけれども、日本が戦後、ずっと米国のほとんど、飼い殺しのままにいろいろと収奪されてきた。
男の体は成(な)しているけれども機能を失った、いわば宦官のような国になったということの、自責と、それも踏まえて議員を辞職しました」
「東京という大事な首都を預かる仕事をずっとやってきて、改めて感じたことはやはり、日本のですね、中央官僚の支配している政治というものはやっぱり、変えなくちゃいかんということで、いくつかの試みをしてきました。
それに、いくつかの点でですね、共感をしてくれて、東京でやれたことをそのまま受け継いでくれた、当時の橋下(徹)大阪府知事とですね、非常に共感するところが多くて、私は彼との出会いは人生の中で快事だと思っておりますけれども。
その後ですね、国政に戻る決心をして、ここにいる平沼(赳夫国会議員団代表)さんとは、かつての盟友の関係でありましたけれども、都知事時代には平沼さんの立ち上げた(政党の)『たちあがれ日本』の名付け親にもなり、応援団長としてですね、協力をしてまいりました」
「さて、国会にもどってきたら、これからの、私も加わってですね、『たちあがれ日本』の行く先を考えて、私は非常に共感をしていた橋下さんの日本の維新の会とですね、しっかり協力して大きな仕事をしようじゃないかということで、申し込みをしましてですね、京都で、私たち側は私と、平沼さんと藤井(孝男国会議員団総務会長)さんと、園田(博之国会議員団幹事長代理)さんの4人で出向きました。
なぜか向こうには、今の日本維新の会の(国会議員団)幹事長をしている松野(頼久)さんも陪席しておりましたけれども」
「私にとって、強い印象に残っているのは、今日ここにいたるまで、いろいろと党の中にぎくしゃくしたことがあったことは否めませんが、その最初のはしりとして小さな亀裂がその4人の、橋下さんとの会談の中にありました。
その時、橋下さんがはっきりと、「私たちが必要としているのは、石原さん一人で、平沼さんたちは必要がない」ということを(言った)。
ずいぶん思い切ったことをいうなあと、私はハラハラしたんですが、平沼さんはですね、先のことを考えて本当に、我慢をしてくれました。
私は平沼さんというのはですね、“ポスト小泉”(の時代)になってからも自民党の有力な総裁候補だと私は思っておりますし、現に私も個人的に親しかった、小泉(純一郎)総理に期待をしておりましたけれども、この平沼さんがですね、そのとき、まあ、よくそれをこらえくれて。
私は帰りの電車の中で、彼に本当に感謝もしましたが、そういったですね、そのときの心理的な亀裂とういうものがずっと、尾を引いていろんな形になったことは、私は否めないと思います」
《石原慎太郎共同代表会見全文(2)》「限られたメンバーだが政治生命を賭して志を遂げたい」
【産経ニュース】2014.5.29 18:50(1/4ページ)
「私の個人の問題で申しますとね、さきほど申したように私は、この国を立て直すために、アメリカが日本を解体・統治するための一つの便法として作ったあの憲法、日本文としても間違いだらけの憲法をですね、私は何としても直したいと思ってるし、そのことについていくつか論文にも書いてきましたが‥‥。
いずれにしろですね、前文という非常に醜悪な日本語で書かれている、憲法の理念をうたっているつもりの文章(は)、助詞ひとつ取っても間違いだらけの文章ですが。
こうしたものに私は本当に、物書きの一人でもあるし、日本語に愛着を持つ日本人の一人として、とても我慢がならない、ということも申してきました」
「そのあとですね、いろいろ経緯がありまして、私と一緒に(維新の)共同代表を務めている橋下さんがですね、どういう所存でか、『結いの党との合体を一つの引き金にして野党再編をしたい』と。
これは否みませんが、しかし、私は(再編の)大きな引き金になるとはとても思えない。それから、江田(憲司みんなの党代表)という人物、私、よく知りませんけども、儀礼的な訪問を1回受けて、彼が憲法について何か言おうとするんで、『集団的自衛権の問題についても、あなたの見解を披瀝する機会、あると思うから、そのとき聞きましょう』ということで別れましたが」
「まあ、いずれにしろですね、結いの党との合併合体というものはどうやら進んでいくプロセスの中で、いろいろ、集団的自衛権に対する江田氏の見解、結いの党の見解、あるいは集団的自衛権という日本にとっての致命的な問題に対する見解に大きな齟齬(そご)が感じられて、私はですね、これ、とても、こういう人たちと維新の会が合体するゆえんはないなという確信を抱くに至りました。
ということで、野党の再編も一つの眼目かもしれませんけど、私それ否定しませんけど、「その目的に向かって進むにしても、選択の方法が違うんじゃないか」と思い続けてきましたし。その相手として結いの党を選ぶということに、私はどうにも合点がいかない。
同じように考えている仲間が案外、維新の会の中にいまして、私が昨日、実は名古屋に出かける前に、自主憲法研究の会の8人の若いメンバーから、日の丸を背にした寄せ書きをもらいましてね。という激励を受けたんですけども。
そういう仲間もいるということを含めて、私はですね、結いの党との合体にどうしても賛成するわけにはいかないということならば、やっぱり、目的は同じにしてもですね、山の登り方も違うことがありうるだろうし」
「私はですね、(橋下氏に)『分党したほうが、あなた方も潔くスムーズに結いの党と合体がしやすいだろうし、私たちは私たちで、野党の再編成なり、あるいは憲法の問題、それから集団的自衛権の問題、考えていきます』ということを申しました。
特に集団的自衛権の問題はですね、私が知事の在任中に火を付けた尖閣諸島という日本の固有の領土の土地権の問題。
これは、私がですね、衆議院に在任中に、数人の仲間でつくった青嵐会がやはり、この問題について着目して、あそこの持ち主の栗原一族から買ってもいいじゃないか、という決心をしたぐらいのものでした。
いずれにしても、その問題も今日大きく浮上してきているわけで、こういった私たちが政治生命かけてきた問題について、いかにも合点のいかない政党と手を組むということは、私は許容できない。
ということで、平沼さんなんかとも諮って、思い切って分党しようという決心を固めました」
「分党ということについてはですね、実は、最初に言い出したのは私らだけじゃありませんで。
実は、前々回の執行役員会でもですね、橋下さんが「来年の統一地方選を考えると、非常にいろんな問題がある。それをクリアするために、大阪維新の会が独立して一つの政党になって、結いの党と合体して、力を添えあって、地方選挙を切り抜けたい」ということを申されて。
これは、私たち、心外な問題です。あの時点で、大阪維新の会が独立して一つの政党を作るということは、どうにもややこしい選択だと思って、私は反対をしました。執行役員会では、これに対する反論が起きて、彼は思いとどまってくれましたが」
「いずれにしても、皮肉なことですけどね、私たちが、その後の経過を含めて、とにかく、この決心をしたということ。
私も平沼さんも、かつての吉田松陰や大塩平八郎のですね、熱烈な‥‥、別に陽明学の信徒ではありませんけども。
しかし、あの陽明学が説いてる自分の志を遂げるためには、ある場合、自分の身に降りかかってくる不利不幸というものをあえて享受しながらでも、行動を起こさない人間は、孔子の言った人間の最高の徳である『仁』というものを体現できない-ということを言ってますけど、それにのっとったわけではありませんが、ともかく、限られたメンバーではありますけど、自分たちの政治生命を賭して自分の志を遂げたい、ということで、分党を申し込んだわけであります」
《石原慎太郎共同代表会見全文(3)》「橋下氏と出会ったのは僕の人生の快事」
【質疑応答】
--分党した先にある新党はいつ頃、どういう形で立ち上げていくか
「これは選挙法というものがありましてね、クリアしなくちゃ問題があるようですからね、この問題に詳しいですね、藤井議員が責任を持って大阪と相談しながら遂行していただけると思っています。
加えて申しますと、その時に橋下さんに申し上げたんだけれども、こういうことになった後、次の選挙に非常に問題があるだろうから、その時、決して同士討ちにならないように事務的な折衝をするような態勢だけ取っておきましょうということで、彼は彼で、これにも同意してくれました」
--今後の野党再編は。安倍晋三政権に対して協力するのか
「安倍政権を私は非常に高く評価していますね。日本をもう一度取り戻すということがね、とても大事なことで、保守の源流として私たちが成就しなくちゃいけない大きな命題だと思っています。
ただ、何をもって日本を本当に取り戻すか。それはやはり端的に言って『自立・自前』ということでしょうね」
--分党せざるを得ないことになったことについて、代表としての責任をどう考えるか。橋下氏と分かれた率直な気持ちは
「私はね、橋下さんという人物を非常に評価し、期待もしていました。
私が都知事の時代にも彼と出会ったことがね、僕の人生にとっての一つの快事だったと思っています。
ですからね、彼とたもとを分かつことは非常に辛いですけどね。
しかし、千昌夫の(ヒット曲の)『星影のワルツ』じゃないけど、『別れることは つらいけど 仕方がないんだ 君のため』でね、仕方がないよ、国のために私はそういう選択をしました」
--分党を選ばざるを得なかったことについて代表として責任を感じているか
「責任ということはどういうことですかねえ。私たちは国会議員として、党として国民に対しての責任を負っているわけですからねえ。自分の節を曲げてまで思っていない道をいくことは私たちを選んだ国民に対して、期待してくれている国民に対して背信だと思いますね。私はそれ、できません」
--分党をしたのはなぜか。政党助成金との関係もあるのか
「これは分かりません。詳しい事務的な手続きについては藤井さんが精通しており、これからの問題だと思いますから、藤井さんに聞いてください」
--離党という形式という話は出なかったのか
「分党ですね。考え方が違う。山を登るにしてもいくつか登り口があるでしょうから。それはそれぞれが選択したらいいと思いますね。そういうことです」
--野党再編にも取り組んでいくということだが、念頭に置いている政党は
「これからねえ、それは大きな命題だと思いますね。絶対多数を持っている自民党がこれからどういう動きをするか。数を背景にして横暴逸脱なことをしたら私たちはチェックをしなくちゃいけない。そのためには力を持たなければいけないと思います。見識を踏まえてのことだと思います。
私は率直に言ってね、維新の会の支持率も残念ながら色々な事情で落ちてきた。それから結いの党をみてもね、支持率が1%に満たない2つの政党が合体することが大きな引き金になるとは思えない。あなた思いますか」
《石原慎太郎共同代表会見全文(4)完》「公明党は必ず足手まといになる、といったとおりになってきている」
--新党の規模は。新しい党の理念は
「それはね、繰り返しますがね、政治生命をかけて進行しなくちゃいけない。改憲の問題もあるでしょう。それから今、こういう国際情勢の中に置かれているような、私はね、事が起こるたびに内閣は『遺憾の意』を表明する。私はねえ、遺憾の意じゃなくて『怒りの意』だと思いますよ。日本人が鬱屈して持っている感情というものを沈静させ、国民を安心させるためのいろいろな措置をこれから取らなくちゃいけない。
集団的自衛権の問題もそうでしょうけどね。
そのはしりとして尖閣を東京都が買ってもいいと言い出したわけですけど、それが残念ながら妙な引き金になって、民主党が勝手に横から手を出してお金を積み重ねて持ち主を買収するようなことになってしまったけれど…。こういった問題も焦眉の問題だと思いますね。
それから中国の覇権主義も防がなくちゃいけない。私は個人的にダライラマと非常に親しいんですよ。
彼が来るたびに会っていました。このごろ会わせてもらえない。外務省が反対して。彼の代理人のペマ・ギャルポ君という人物がいますけど、この2人から私は逐次、チベットがどうやって収奪されて中国の属国になっていったか、文化を、民族を失ったかということを聞かされている。
私は日本が中国の属国にならせてはいけないと思う。子孫のためにも。
それを講じるために私は、自分たちがある意味で自民党よりも保守的といわれても、『すべき主張』を遂げていかなくちゃいけないと思っています」
--新党の規模は
「これは分かりませんね。私たち主張が、党を越えてもどれだけの人たちの共感を得るかはこれから先の事で分かりません」
--集団的自衛権の問題では、公明党は石原代表らの行動に注目しているようだが
「私も公明党に注目しているんだよ」
--与党協議が進まない中、こうした現状をどう見ているか。与党の協議に新党として関わる考えは
「私はね、前の党首討論の時も申し上げたんですけどね、集団的自衛権の問題をめぐってこれからどういう展開になるかは分かりませんがね、安倍首相に申し上げた。
『あなた、必ず公明党は足手まといになりますよ』と言ったんです。その通りになってきているんじゃないでしょうか」
「集団的自衛権について申し上げるとね、日本には個別的自衛権は果たしてあるんですか。日本のようにね、自衛隊を構えながら交戦規定がはっきりしていない国は世界中にないんですよ。
たとえばね、ソマリアの海賊の退治に日本の海自が出かけたときにね、ばかな何人かの議員が反対して、ピースボートを仕立てて、それに賛成する連中がでかけていって、向こうの船をチャーターして日本の海上自衛隊の艦船を監視したつもりでいたけれど、非常に不穏な状況で怖くなって、海上自衛隊に「いざというときに守ってください」という依頼をして…。
これはさすがに体裁が悪くなって、彼らはそれを引っ込めて何をしたかと言うと、本国に打電して海上保安庁ならいいだろうと、海上保安庁に「出てきて自分を守ってくれ」と。
これは非常に防衛庁も困惑して、現地にいる海上自衛隊の艦船にどういう訓令をしたかというと、とにかく相手が不穏な行動をしたときに警察官職務執行法にのっとって相手のやったことが『禁錮6カ月以上に該当する行為だったら取り締まれ』と。
外国に出向いている自分の国の軍隊に警察官職務法にのっとって行動しろなんてばかな訓令をせざるを得ない国ってどこにありますか?急場に臨まなくちゃいけない自衛隊員がかわいそうですよ。日本には交戦規定がないんです」
--分党を提案したとき、橋下代表はどういう表情で、どういう答えが返ってきたか
「なぜでしょうか、と彼は当然聞きましたね。だから私は理由を申し上げた」
--以前、維新の会と合流する際に石原さんは橋下さんについて「総理大臣にしたい」と言っていた。今も彼を首相にしたいか
「彼は日本の社会の中で希有(けう)な存在であると思いますね。私はね、あんなにね、演説のうまい政治家は見たことないね。
ただ、やっぱりね、これから大成していくためにもっと幅の広い教養というか、幅の広い経験を積む必要があると思いますな。やっぱり弁護士という才覚だけではね、大きな仕事はなかなかしにくいと思いますしね。そういう点では私は今でも彼に期待しています」
--石原、橋下の二枚看板に期待して投票した有権者にはどう説明するのか
「だから今申し上げたことを言わざるを得ないじゃないですか。自分たちの政治生命をかけての問題について節を折るわけにはいきません。
私たちに期待し、指示してくれた人に対する背信でしかないと思うから。同じような考えで行動する人間が何人もいると思いますよ」