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8月9日に投開票された東京の立川市議会議員補欠選挙。
ここで見落としてはならないのは「単なる勝ち負け」ではない。
「今回、投票率が29・20%と極めて低かった。地方選挙で20%とか30%とかの低い投票率の場合は、もちろん無党派は投票に行かず、組織票だけが投票に行っている。そうすると自民党が勝つケースがほとんどだ。
「低投票率は自民党が勝つ」という「地方選挙」の常識が覆された背景にはなにがあるのか。
「つまり投票に行った自民党支持者が、いまの安保関連法案や政権運営に嫌気がさして反自民候補に投票しているのではないか。
さらにまったく同じ傾向が、その前週の8月3日に投開票された宮城県の仙台市議選でも現れた。
仙台市議選の場合、仙台市内の5つの選挙区のトップ当選の座は、過去ほとんど自民党の指定席。
そして、仙台市議選もまた前回を下回る低い投票率。
また、この夏の「地方選挙」では岩手県知事選挙のケースも見逃してはならない。
■自民、小沢軍団に完敗
8月20日告示、9月6日投開票となった岩手県知事選挙
岩手は小沢一郎の地元だ。
「小沢さんは、今回の知事選を野党再編につなげるためにすでに年明けから動いていた。民主党や維新の党、それに共産党にまで密かに会って共闘を働きかけてきたのです」(民主党幹部)
一方の自民党は元小沢の側近でその後袂を分かった二階俊博総務会長が、元々民主党だった平野を自民党に引っ張り込み、「小沢王国を潰す」と怨念の戦いを進めてきたのだった。
ところが、内閣支持率の急落によって「地元のマスコミの世論調査は達増がダブルスコアのリードにまでなった」(前出民主党幹部)ことから「平野が惨敗すれば、安保法案採決にも影響が出る。最後は、安倍首相と二階さんで『ここは負けるが勝ち』と降ろしたというのが真相」(自民党中堅議員)だという。
ただ、この不戦敗が奏功するかといえば「逆だ」と自民党岩手県連幹部は言う。
「支持率が下がっているときこそ戦って結束すべき。
こうした夏の自民党の「連敗」は、いずれも来年の参議院選挙への不安へと向けられている。
まずは立川市議補選を振り返っての東京都連幹部の都議。
「東京は全国一の無党派の集積地。安保法案で『支持政党なし』が増えている。参院選で東京選挙区は二人当選が命題だが、公明党も候補が出てうちが単独で票を出さないといけない。無党派にそっぽを向かれたら厳しい」
■これからが「冬の季節本番」
続いて仙台市議選について、自民党・宮城県連幹部県議はこう吐露する。
「怖いのは来年の参院選だ。宮城は選挙制度改革で定数が減り1人区だが、都市部の仙台で今回のように逆風が吹き、そこへ野党が候補を一本化してきたら厳しい」
これに加えて、安保関連法案反対運動がじわりじわりと「反自民」の空気を醸成している。憲法学者グループの代表格の教授は、
「法案が成立しても、その後、違憲訴訟を起こすほか、大学生の自主的なグループ・SEALs(シールズ)、小さな子供を持つ母親たちのママの会、元最高裁判事・元内閣法制局長官、文化人や音楽・芸術家など、みんなで来年の参院選まで活動を続けることを話し合っている」
という。法案反対は、選挙運動にまで発展しつつあるのだ。
総裁選で「無投票再選」した安倍。